しゅうぺいの学びログ

本から学んだことをもっと世界に広めたい。小説・ビジネス書・TEDの感想などを綴ります。

漫才師と文学の出会い 『火花/又吉直樹』

火花/又吉直樹』を読みました。

 

冒頭の文章がかなり文学的な雰囲気なので敷居が高そうにも見えますが、物語は漫才師のお話なのでなじみやすいです。

芥川賞をとるにふさわしいか?文学的に優れているか?

そういったことはあまりよくわからないんですが、個人的にはおもしろかったです。

小説としてすごく楽しめました。

「笑い」と「文学の表現力」について考えさせられました。

 

こんな人におすすめ

  • 大阪弁が好きやねんという人
  • ボケとツッコミの掛け合いを楽しみたい人
  • 『チルドレン/伊坂幸太郎』を読んだことがある人 
火花

火花

 

 

 

あらすじ

お笑い芸人二人。奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。人間存在の根本を見つめた真摯な筆致が感動を呼ぶ!

 

このシーンにグッときた!

雨が上がり月が雲の切れ間に見えてもなお、雨の匂いを残したままの街は夕暮れとはまた違った妙に艶のある表情を浮かべていて、そこに相応しい顔の人々が大勢往来を行き交っていた。

 雨上がりの街をこんなふうに描写できることに僕は感動しました。冒頭のお祭りの風景の描写もそうですが、この本には、言葉の表現の世界を楽しめる箇所がところどころ出てきます。ベースとなるストーリーも面白いですが、洗練された言葉の表現にもぜひ目をとめてじっくり味わってほしいです。

ほぉーっ、こんなふうに言葉で表現できるのか!自分の中からこんな言葉は出てこないな。と関心してしまうこと が多々ありました。

 

感想

純文学としての表現と作りこまれた個性的なキャラクター。この2つがこの『火花』の見どころだと思います。

 

僕(徳永)の師匠にあたる神谷は特に強烈なキャラクターです。神谷が繰り出すボケは奇抜で、芸人の徳永ですら「追いつけない。」と思うほど。実際、この二人の掛け合いには笑わされました。(個人的にはコーデュロイパンツの下りと徳永が泣くシーンが好きです。)

 

それから、神谷が話す大阪弁も心地よいですね。より個性を際立たせる要素だと思います。

 

キャラの濃い神谷とどこか落ち着いてる徳永。この二人を見ていると、僕は『チルドレン/伊坂幸太郎』の陣内と鴨居を思い出しました。この作品を読んだことがある人にはおすすめです。

 

芸人さんが書いた本ということで言うと、以前に僕は『陰日向に咲く劇団ひとり』を読んだことがあります。

shuhei1213.hatenablog.com

 

比べられる前提で本は書かれていないと思いますが、それぞれの著者は以下の点が優れていると思います。

 

劇団ひとりさん

多彩なキャラクターの描きわけとストーリの構成

 

又吉直樹さん

個性的で愛したくなるようなキャラクターの作り込みと純文学的な情景描写

 

 

硬いイメージの「文学」と大衆娯楽としてくだけたイメージの「漫才・お笑い」。

その組み合わせが1つの小説として成立しているところが秀逸だと思いました。