しゅうぺいの学びログ

本から学んだことをもっと世界に広めたい。小説・ビジネス書・TEDの感想などを綴ります。

危機感をもって生きる 『V字回復の経営/三枝匡』

『V字回復の経営/三枝匡』を読みました。 

 

 

目的:物語で「経営」の視点を取り入れる。会社経営、再建の疑似体験。

 

キーワード:改革、経営、戦略、スピード、当事者意識、リーダーシップ、論理性、

 

【学んだこと】

組織について

組織はしょせん人間の集まりであり、人々の心の中に入り込まない限り、会社は変わらない。

 

社内の実態について 

一般に企業の業績悪化と社内の危機感は相関しない。社員はそれなりに深刻な状況だと思いつつも、誰もが「自分のせいではない」「自分で治せる問題ではない」と考えている。

 

業績悪化につながる個々の小さな要因

現場に役立つ数字が示されておらず、社員の業績判断があいまい。

戦略が個人レベルまで下りていない。

開発者と市場のずれ。「良い商品」の定義が社内でずれている。

営業は自分の売りやすい商品を売っている。

毎日の「活動管理」が甘い。

 

会社再建の抜本的なアプローチ

現場の小さな問題を1つ1つ分類し対処しようとしても出口はない。

皆が同じ理論・思想を共有することが重要。課題に包括的にアプローチできるコンセプト。社員に新たな『共通言語』が生まれたとき、はじめて改善のプロセスが始まる。

 

経営者意識を持つには

人は損益責任を問われない限り、経営者として育つことはない。

 

改革の9ステップ

  1. 期待のシナリオ:Asis/tobe 「こうあるべき」を明確に描く
  2. 成りゆきのシナリオ:現実の直視から「このままいけば事業はどうなるか」と未来予想図を描く
  3. 切迫感:①と②のギャップの認識 危機感はボトムアップで生まれない。リーダーが人為的に生み出すもの。そして、会社の痛みを個人レベルにまで分解する。
  4. 原因分析:問題の本質に迫る 分析スキルと原因分析に対するこだわり(執拗さ)が求められる。
  5. シナリオ作り:シンプルで強力な戦略ストーリを組み上げ、社員の行動・マインドにインパクトを与える。
  6. 決断:⑤と並行して進める。決断は改革案のプランニング段階でほぼ決まっている。
  7. 現場への落とし込み:遠慮や迷いを見せず、燃えるリーダーシップによって改革案を具現化する。
  8. 実行:突出部分を決め、短期勝負で一気に改革を進める。
  9. 成果の認知:小さな成功を早い段階で積み重ねる。「褒めるシステム」を工夫する。

 

【感想】

想像以上に自分の知らないことがあり、非常におもしろく読めました。

コマツの子会社の再建を請け負った三枝さんの実話に基づくストーリなので、リアルさも抜群です。組織を改革する難しさを知りました。

単なる経営の理論に終わらないところがこの本が高く評価されている所以だと思います。また、巻末にある対談もよかったです。

本編と合わせて読むことでより学びが深まりました。

 

一番感銘を受けたのは、

エリート=×「選ばれた者」 ○「集団への責任を自覚した者たち」

 

今、日本には

「自分がこの国の将来を背負っている。」

「この企業を救うのは自分だ。」

と使命感を抱いているエリート集団がいるだろうか?

 

という文章です。

この問いは心に刺さりました。自分にはまだ当事者意識が足りていないと自覚できたことは、この本を読んで得られた大きな収穫だと思います。

 

先日「労働生産性」に関するこんな記事がありました。

www.huffingtonpost.jp

 

2013年の調査では、日本の労働生産性はドイツのそれよりも34%も低いそうです。

 

このニュースと読んだ本を結び付けて考えるとき、キーワードになるのは「当事者意識」や「危機感」ではないかと思います。

日本国民はドイツなどのヨーロッパ諸国に比べると、島国という土地のせいで、圧倒的に「外」に触れる機会が少ない。

それゆえ、日本人はどうしても危機感を持ちづらいのではないかと思います。人間は基本的には比較することでしかモノゴトを知覚できないので。

 

労働生産性」は根深い問題で、おそらく「教育」などの要因もかかわってくるかもしれませんが、「危機感が薄いこと」も日本の労働生産性が低い原因ではないかと思います。

 

この本にある改革の9ステップは会社経営だけに有効というわけではありません。

生きることを人生の経営、あるいは自分自身の経営と考えたならば、この9ステップは自身の改革に活かすことができます。

そして、日本を一つの会社とし、経営していくと考えたならば、9ステップは日本の労働生産性を上げる、ひいては日本の再生に活かすことができるのではないでしょうか。