しゅうぺいの学びログ

本から学んだことをもっと世界に広めたい。小説・ビジネス書・TEDの感想などを綴ります。

表紙は怖いけどあったかいんだから 『暗いところで待ち合わせ/乙一』

暗いところで待ち合わせ/乙一』を読みました。

 

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

 

 

こんな人におすすめ

ライトな感じのミステリーでドキドキを味わいたい
不思議だけど優しいお話に出会いたい
 
 

あらすじ

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい2人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、今の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らないふりをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった―。
 

この文章にグッときた!

台所のほうから、冷蔵庫のわずかな振動音だけが聞こえてくる。家の中がゆっくりと甘く腐っていくように感じる。
『静寂』はこのストーリーに欠かせない重要なキーワード。今回選んだこの文は、間接的にその静寂をうまく表現していると感じた。暗闇の中で一人で孤独とたたかうミチル。闇の中に溶けてしまいそうになる彼女の心境をイメージさせ、とても印象的だった。
 
 

感想

 表紙は少し薄気味悪いホラーな雰囲気を醸し出しているけど、実は心あたたまるお話。ストーリーの設定が奇抜でとてもおもしろいです。これまでたくさん小説を読んできましたが、その点では群をぬいています。若干ツッコミをいれたくなる箇所もあるけど、そこには目をつむりましょう。あらすじで著者が語っていますが、この話はアイデアありきで書き下ろされた小説みたいですね。どうやったらこんなストーリーのアイデアが浮かんでくるのか教えてほしいです。
 不器用なため孤独に耐えながらそれぞれの人生を歩んできた二人、ミチルとアキヒロ。ある事件がきっかけで二人の人生が交差する。ひとつの部屋に、お互いがお互いを意識しないようにしながら共存する様子は非常にスリルがあります。同じ場所、同じ時間がそれぞれの視点から描写されるのですが、映像化してしまったらこの緊張感はうまく表現できないと思います。ぜひ本で味わうことをおすすめします。