光媒の花(道尾秀介) 感想
友達のおすすめということで読んでみた本。
道尾秀介さんの著書の中では、これまでに、
「向日葵の咲かない夏」と「カラスの親指」を読んだことがあります。
同じ作者とは思えないほどテイストが違うので、
とても驚いたのを今でも覚えています。
「光媒の花」には40ページほどの短編が6つ入っていました。
6つの短編は登場人物が少しずつつながっています。
その人物が誰なのかを探しながら読むのもおもしろかったです。
とはいえ、その楽しみはちょっとしたエッセンスにすぎず、
真に味わうべきは、やはりストーリー展開だろうと思います。
たった40ページほどで築きあげられた世界に、僕は毎回ひきこまれました。
思わず息をするのを忘れてしまうような緊張感。
ページをめくる手が止まりませんでした。
ストーリーのラストにかけて、
少しずつほのめかされていく事件の真実。
その見え隠れする真実にハッと気付いた時の、
ドキドキ・ワクワクがたまらなくおもしろかったです。
また、僕がこの本を読んで注目したのは、「表現力の豊かさ」です。
この小説は、比喩表現やメタファーがとても優れた作品だと感じました。
特に気にしなければ通り過ぎてしまう表現の数々。
一見ささいなようだが、僕にはそれぞれがキラリと光って見えました。
そうした表現が、読者をストーリーの世界へと引きつけるのに
一役かっているのだろうと思いました。